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3. 景気循環の波
世界の歴史を振り返ると、好景気、不景気が繰り返されています。
日本でも近年景気はパッとしませんが、1986年~1991年はバブル景気と言われ、ものすごく景気が良い時期もありました。
バブルの頃は、みんなが使いすぎてタクシーも捕まらなかったり、通常年2回のボーナスが年4回出る会社があったり、学生が就職活動して内定が出ると海外旅行がついてきたりと今では考えられないほどの景気の良さでした。
この好景気、不景気の循環について、よく知られているものをあげていきます。
(1) キチン循環
「キチン循環」は、約40ヶ月の比較的短い周期の循環です。短期波動とも呼ばれます。
アメリカの経済学者ジョセフ・A・キチンが1923年の論文でその存在が主張され、ヨーゼフ・シュンペーターの景気循環論によって「キチン循環」と名づけられました。
企業の製品の生産量と在庫量(予備・売れ残り)をそれぞれ増加・減少の2通りずつ分け、景気の状況が判断し、これが約40か月の周期があるとするものです。
① 生産増・在庫減
- たくさん生産しているのに、売れ残りが少なく、好景気の初期
② 生産増・在庫増
- 好景気に乗って生産を増やしていたが、徐々に売れなくなってきて、在庫が増えてくる、好景気の後半期
③ 生産減・在庫増
- 売れ残りが増えてきたので、生産を落としたが、まだ在庫が増えてしまう、不景気の初期
④ 生産減・在庫減
- 生産を大きく減らし、やっと在庫が減ってくれる、不景気後半期
この①~④を40か月で繰り返すのが「キチン循環」ですが、昨今はこの循環が見えにくいケースも増えています。
(2) ジュグラー循環
「ジュグラー循環」は、約10年の周期の循環です。中期波動とも呼ばれます。
フランスの経済学者クレマン・ジュグラーが1860年の著書の中でその存在を主張したため、シュンペーターの景気循環論から「ジュグラー循環」と呼ばれます。
企業の設備投資に起因する循環と考えられています。
(3) クズネッツ循環
「クズネッツ循環」は、約20年の周期の循環です。
アメリカの経済学者サイモン・クズネッツが1930年にその存在を主張したことから、「クズネッツの波」と呼ばれます。
約20年という周期は、住宅や商工業施設の建て替えまでの期間に相当することから、建設需要に起因するサイクルと考えられています。
子供が親になるまでの期間に近いことから人口の変化に起因するとする説もあります。
(4) コンドラチェフ循環
「コンドラチェフ循環」は約50年の周期の循環です。長期波動とも呼ばれます。
ロシアの経済学者ニコライ・ドミートリエヴィチ・コンドラチエフによる1925年の研究でその存在が主張されたことから、シュンペーターによって「コンドラチェフの波」と呼ばれました。
その要因として、シュンペーターは技術革新を挙げています。
- 1780~1840年代(第1波): 紡績機、蒸気機関などの発明による産業革命
- 1840~1890年代(第2波): 鉄鋼、鉄道建設
- 1890~1920年代(第3波): 電気、化学、自動車の発達
この循環の要因として、戦争の存在を挙げる説もあります。
また、その後の第4波がエレクトロニクス、原子力、航空宇宙、第5波がコンピューターを基盤としたデジタル技術、バイオテクノロジーとして、それが現在終わりに差し掛かっているといった見方もあります。
他にも、現在も第4波が続いていて、これからライフサイエンス、人工知能、ロボットがけん引する第5波が来るといった見方もあります。